街灯工事のために生垣の木が切られた。
切り株は残っていて、人間都合で、へし折られた幹からは空に向かって真っ直ぐに、新しい芽が出ていた。
寒さで真っ赤に染まった芽がとても綺麗で、通るたびに自然と目が行く。
たった一本、一本だけ、なんとか復活しようとしている姿が、とても愛おしくて。
それなのに。
今朝、通りすがりの老婦人により、その枝はへし折られ、健気な数週間の成長は無惨に終わった。
手提げバックのかわりのビニール袋には、道端に咲いている草木が、いくつか入っている様子だった。
きっと家に持ち帰り、飾るのだ。
あの真っ赤な芽は、今頃、玄関の靴箱の上か、雑然としたダイニングテーブルの上にでも、大切に生けられているはずだ。
鮮やかで綺麗だねと、家族に注目されながら。
こんな些細なことに、傷つく私だ。
私だって無自覚に、希望に満ちた芽を、誰かの想いを、もぎ取っているくせに。
そんな私たちの身勝手さをひたすらに受け取りながら、淡々と、生命はめぐる。