雨が降る前の空に恋をした君へ

孤独がぬるま湯に消えて 君が君でなくなるくらいなら 愛に飢えたふりをしながら 愛してるなんて蹴飛ばして 好きなだけ走ればいいよ どこまでも沈めばいいよ 傷が膿んだら どっかの誰かに触れてもらいなよ 愛されてたまるか きっと望んでなくたって ...
 

蝶々結

クロアゲハは 黒いリボンにとまるんだって。 今日も長い髪を束ねた、朝日を眺める少女を連れて行ったらしいよ。 どこへ? 少女の、脳の中へ。 「朝に帰りたい」 救われることがなく、声だけがぼやけながら響いている。 音の粒を避けるようにして宙を舞...
 

帰路

部屋の天井に黒い粒があって、私を見ています。 恐れて目を背けていますが、多分それは美しさを憎んだ、てんとう虫です。 生きている時と何も変わらぬ姿で、もう数年が経っていました。 私の生々しさが崩れる日を待ちわびています。 川を渡れば、君を愛し...
 

夜を飲む

正義で月が泣いた。 これでみんな幸せです。 よかった、よかったと、歌が聞こえた。 世界平和の外側で、夜を飲む。 罪を燃やしてあかりを灯した。
 

天空の深夜

泣きたくなるような運命が 絵の具を塗る筆の感触と 紙の上を走る鉛筆の音に 吸収されていく。 誰かが私をクッキーの形みたいにくり抜いて あぁ、あなたは星の形なのねと言った。 くり抜いた手にも、それと同じ形の跡が残っていて、「同じですね」と返事...
 

☆の角

料理に塩を入れ忘れたことなんて、ほとんどないのに。 誤タップで、知らないうちに意味不明な投稿ミスを連発したし、最近なんか変。 鮮やかな無数の星を腹の中に飼っていてさ、あの角が僕の内側から刺してくるんだよね。 星⭐︎の角ね。 結構いたいのよ、...
 

細い指の関節に触れる

一時の気の迷いで運命なんて作り上げちゃって、たかが恋愛に産み落とされて、輪廻の渦にのまれてく。 それでも意味があるみたいに夢を追うのは、本当は無いものが、そこにはあると思わせてくれるから。 現実しか存在しないなんて、きっとやりきれない。 で...
 

レアチーズケーキ

恋をして脳が傷ついたのだと思います。 長い時間をかけて癒そうとしますが、一度傷んだものは、もう元には戻らないことを何かで読みました。 食べ尽くしてしまいたいと、思いますか。 腐っていく記憶と一緒に、切り捨てたいですか。 それとも、たいして好...
 

語りかけたのは誰ですか

夢の中で詩を書いていたのに、忘れてしまった。 ついさっきのことなのに、白い影だけのこして戻らない。 誰かのことを書いていた気がした。
 

最後の絵の具は透明でした

命の後に完成するんだろうきっと。 ふと、それがわかってしまって怖くなった。 未完成なままの絵を残す僕。