2024-05-03

 

月の砂

運命なんて存在しない。 と、知った月は嬉しくなった。 これからは話をしよう。 夜空を見上げて鳴いている白猫が 眠りにつくまで。
 

きっとここは持つものの世界

黒くてごつごつとした洞窟内には、目が眩むほどの色彩で宝石が埋まっていた。 彼らは陽気な声で笑い、歌い、手を取り合って会話をしては、家族のように繋がっている。 その空洞の、真ん中を歩くのは寒かった。 ここは僕が通るための道ではない。 がらんと...
 

2人乗りのオセロ

朝、通勤、登校時間帯。 デリバリー用の荷台が付いたバイクに、親子が乗っている。 どこかにっこりと誇らしげな表情を浮かべながら、すくっと前を向いて運転をする、父親の後ろで、少しだらしなく首を傾け、スマホに夢中の女子高生。 同じバイクに乗りなが...