2024-07

 

葉無しの味噌汁

大根の頭を生ごみの袋に入れた瞬間に 頭から黄緑色の柔らかそうな芽が伸びていることに意識が向いて お味噌汁にいれたらよかったかな、なんて後から思った。
 

耳を塞いで笑っていてよ

本当のことなんて、みんな聞きたくないんだ。
 

子どもの心が安らぐこと

子どもは写実を好むという話を聞きました。 絵本にはデフォルメされたイラストが用いられることが多いので意外。 簡素な画面は不安感を与えるらしく、“本物のように描かれた野菜”など、見たままの世界に自然と心が向かうそう。 わたしたちは生きている間...
 

ホルマリン

透けて見えた心臓にはっとする。 それっぽく見せて、血が通っていない。 冷たいのに、脈打っている。 見ないふりは疲れるんだ。 羽は沈んで。 黒い血液は浮かんで。 命は逆さまになって。 目を閉じたまま。
 

プリズム

空に手を伸ばして、高く、高く、きっとその先に僕がいる。 指の隙間から差し込む光が眩しくて、全ての痛みが顔を覗かせた。 あぁ、そこにいたんだね。 みんな生きているんだね。 傷に怯えないで。
 

無限の命を結ぼうよ

このために生まれた。 描くために耐えてきた。 全てこのために、私が存在した。 表現をする媒体は何でもいい。 自分に与えられた能力のうち、最も活用できそうなものが、たまたま描くという行為だった。 では表現をして何になるのか? 絶対に失うことの...
 

海底のレプリカ

愛を求めて、表面的に模した幸せに、傷つくこともあるでしょう。 だって、わからないもの。 愛なんて知らない。 そのうち紛らわす行為にも飽きて、めんどくさくなって、やっと心の底に辿り着くんだ。 深い底に敷き詰められた砂は思ったよりも綺麗で、触れ...
 

夜の窒息

気づけば本能が夜を窒息させようとしていて、暗闇に浮かぶ星々はそんな僕を受け入れてくれた。 戸惑いながら嬉しそうに横を向くきみが可愛い。 きみが誰で、僕が誰なのか曖昧で、くるくると入れ替わるから、永遠がここにあるのかと勘違いをしてしまう。
 

嫌われた色

みんなが選ばずに、残った色鉛筆を手に取って、綺麗な絵を描いてあげる。
 

ひとこと

「ありがとうございます」 たった一言交わすだけの接点で 思いがけず贈り物をいただいた 嬉しくて帰り道ずっと、思い返していた