きっとここは持つものの世界

黒くてごつごつとした洞窟内には、目が眩むほどの色彩で宝石が埋まっていた。

彼らは陽気な声で笑い、歌い、手を取り合って会話をしては、家族のように繋がっている。

その空洞の、真ん中を歩くのは寒かった。

ここは僕が通るための道ではない。

がらんと、広く、隙間だらけの空間で、温もりの代わりに、冷えた空気が、僕の手を握ってくる。

僕は歌った。

誰のためにでもなく、ただ歌った。

彼らが気づくことはない。

なぜなら僕は、どこにも、存在しないから。

でもきっと、前にも、この道を通った人はそうしたんだ。

そして、これからここに、やってくる人も。

僕らが出会うことはないんだろうな。

それでもきっと、それが僕にとっての家族だ。