2024-05

 

大衆の月を抱く

月には大衆という意味があるらしいです。 多くの人が夜に憧れ、月の引力に惹かれます。 堕ちるのは簡単です。 堕とすのも簡単です。 けれど月を抱きながら、何かを堕とすことなく、存在を保つことはとても難しい。
 

人間鮮度

「見てよ、この、鮮やかなほうれい線を。」 「いいね、その表現。」 彩豊かに生きましょう。
 

小さな手

「純粋な本能のままに、生まれてくるのが僕ら。本来の姿でそのままに生きるのも、愛する力を育てながら生きるのも、自由。」 なのだそうで、わたしの理想とやらは、単なる自分勝手に過ぎませんでした。 「愛してるって何なん?」 欲望に忠実なその人はとて...
 

月の砂

運命なんて存在しない。 と、知った月は嬉しくなった。 これからは話をしよう。 夜空を見上げて鳴いている白猫が 眠りにつくまで。
 

きっとここは持つものの世界

黒くてごつごつとした洞窟内には、目が眩むほどの色彩で宝石が埋まっていた。 彼らは陽気な声で笑い、歌い、手を取り合って会話をしては、家族のように繋がっている。 その空洞の、真ん中を歩くのは寒かった。 ここは僕が通るための道ではない。 がらんと...
 

2人乗りのオセロ

朝、通勤、登校時間帯。 デリバリー用の荷台が付いたバイクに、親子が乗っている。 どこかにっこりと誇らしげな表情を浮かべながら、すくっと前を向いて運転をする、父親の後ろで、少しだらしなく首を傾け、スマホに夢中の女子高生。 同じバイクに乗りなが...
 

愛されたい誰かへ

わたしは誰かが心から求めているような、愛は持ち合わせていません。 けれど誰かから必死に愛を教わらなくてはならない程、愛がないわけでもありません。 ごく平凡に、残酷に、身勝手に、純粋に、人間をしています。
 

3部作

少し前には馴染みのなかったAIも、あっという間に普及。 心(神?)を作りたいプログラマー、いや、神になりたい心? それを活用する私たちも、生みたくて仕方がない。 お金を払ってカウンセラーに話をしに行ったのに、「チャットGPTに聞いてみて。」...
 

主婦のつぶやき

夕方、まな板の上で具材を切る音がする。 「◯◯◯は◯◯。◯◯なんて◯◯◯◯だ。」 誰も褒めてはくれない料理をしながら書いた、主婦の投稿はバズって、ポジティブだろうとネガティブだろうと、彼女の中にあった何かの力が拡散していた。 生徒に隠れて一...
 

創造欲求

欲求に突き動かされた果てに、命となった。 芸術なんてものにそれを使い、非効率にもほどがある。 人生に効率を求めるならば、皆んな生まれたらすぐに墓に入ること。 それが最も効率的な生き方である、と誰かが言っていた。 なんて無駄な想像欲求に溢れた...