コイン召喚

1時間ほど直通電車に揺られていた間に、起きたこと。 隣にパンクなお姉さんが座っていた。 靴はドクターマーチン、かぶっているキャスケットからはショートカットが覗いている。 もちろん全身黒ずくめ。 お疲れの様子で顔を上に向けて、長いことぐっすり...
 

終わりの1番星

涙を浮かべてもこぼさずに奥歯を噛み締めた。 どうせ終わりにするのなら、描いてからにしようと、歩いた夜道を戻る。 何度落とされたって、救いの手なんて現れないことは知っている。 挫折の後に運命が開くなんていうのは、どうやら御伽話だけらしいから。...
 

サプリメント

どうして。 一向に解答を得られない問いを繰り返し抱えながら、僕らは迷い続けるんだろうね。 朝、太陽が登って、夜はちゃんと暗くって、生々しいのに、馬鹿みたいに冷たく刻み続けて、 そんなんだから、出口のすぐ向こう側で誰かが泣くんだろうな。
 

クローンになり損ねたチョコミント

青を感じて青色の絵の具を手に取りました。 塗り重ねながら、あぁ、思った通りの色だと安心します。 塗り終えて、もう一度よく見ると、その青がわずかに黄み帯びているように感じます。 今度はエメラルドグリーンの絵の具を手に取りました。 白、紺、ピン...
 

透明な蝶々

真っ白い場所で描いていました。 僕の居場所でした。 ある日僕は外の光が綺麗で、窓を開けてしまいました。 隙間から、風にのって花の種がふわふわと、それから、見たこともない、青く発光する蝶々が飛んできました。 可愛くて、綺麗で、大切でした。 微...
 

触れられる光に背いて

手に触れれば感触があり、心の奥にまで届く様な、美しい光をこの目で感じられるのに、わざわざ仮想空間に、形を表現しようとしている自分を不思議に思いました。 実態の無いまっさらな場所に、理想を創造できる自分を感じることで、この息苦しさから逃げ出そ...
 

適当に作った迷路

価値を削って、大量に生み出せばいつも限界で、 価値が認められれば、今度は大人の欲望に巻き込まれ。 どこへ向かえばいい。
 

当たり前の喪失

普通とされる生き方を私はできないのだと、痛いほど知ってきた。 それなのに諦めきれずに何度も夢を抱いて、もがいて生きてきた。 人生の前半を捨ててでも、辿りつきたかった。 諦めようか、もう。 これでは私が死んでしまう。 そんな私も、見失いそうな...
 

呼吸をする様に描くのに

無心で描けるのに、よそ見をしてぶれた途端、できなくなる。 鉛筆を、筆を、手に握っていることがとても自然な毎日が好きだ。 描かなくてはいけないとか、絵が楽しいとか、辛いとかも無く、 私が生きているから、絵が生まれていくだけのこと。
 

追って逃げたい、お年頃

7歳くらいの男の子が、とぼとぼと道を歩いていた。 だいぶ先に父親らしき人の姿がある。 この距離感はいったい… 父親が道の角に差し掛かった頃、男の子はハッとして急に振り返り、すぐ後ろにいた私とぶつかりそうになった。 私を避けて、楽しそうにかけ...