ひとりきりの演奏会

1人には広すぎる家に、1人きり。

頭を抱え、ソファーに横になって過ごす年末。

「痛ぁ…。」

幸い天気は良好。

活気よく動くことができない、私の気持ちをいくらか和らげてくれていた。

年末といえば今年を振り返りつつ、これから迎える1年間について、あれこれ想像をめぐらせるところだけれど、私はもう少し先の未来…

いつか来るであろう、本当に1人きりになる自分の姿を思い浮かべた。

弱気な自分を振り切り、そんな暮らしをいかに楽しむか、アイディアをならべる。

30分ほど前に飲んだ頭痛薬が効き始めているようで、ふわ、ふわと、時々痛みが緩むような感覚がした。

「…ピアノ弾こ。」

重い頭を気にかけながら、ゆっくりと立ち上がり、うっすらと埃の被ったピアノに触れた。

いつもならイヤホンを繋いで縮こまりながら引いているピアノも、今日は音を気にせず楽しめる。

すっかりと硬くなった鍵盤の重さを指に感じながらコトンと押すと、澄み渡った音が広がった。

1人演奏会を始めます。

心の中で唱えた矢先。

ガチャガチャという鍵の音と共に、お馴染みの声が聞こえた。

「ただいまー。」

なぁんだ、と、少しがっかりしながらも顔を緩ませる。

おかえり、と返事をした。