香の煙が空中でうねって、わたしを脳内世界に誘いました。
現実なんかよりも、ずっと広大で、入口も出口もありません。
こんな雲のような気持ちの良い場所で、誰かと同化したって、そのときはもうすでに、わたしも誰かも存在しないのだから、逝かないほうがいいんです。
もっと生を感じてよ。
大量の生ゴミを見ないふりして、幸せぶってる私たちが生かされているこの星の、土の上を裸足で歩きました。
少し湿った、ひんやりとした岩肌にも触れました。
夏を迎える支度をしている、青く茂った葉が、擦れ合う音も聞こえます。
生き物がいて、食べて、触れ合って、そうやって生きなよ。
狭間で揺れた意識は、むせかえるような香りに手を引かれ、再び現実へと帰ります。
窓を開けて、生々しい空気を吸っていたい。