午後の日差しを背に、白く発光しているすすきを眺めていました。
穏やかな風に揺れ、どこか遠く優しい世界へ、手招きをしているようでした。
「ずいぶん遠くまで来たな。」
車内でコーヒーを片手に、〝誰かに届けたい独り言〟をぼそりとこぼしていました。
「都会に出てきたから?」
何も気づいていないふりをして問い返します。
「あぁ、まぁ、それもそうなんだけど、よくこの年まで頑張ってきたなと、思ってね。」
「だって、私の2倍は生きているものね。いつか私も、ずいぶん長く生きたと、感じる日がくるのかしら。」
別に長く生きたことを実感しているわけではないと、わかっています。
歳を取ったって、子供の頃と何も、心は変わらないもの。
未来が近いことを感じ取っていっているのでしょう。
わかっていたけれど、何て答えればいいかわからなくて、特別伝えたいとも思っていない言葉を並べました。
「まぁ、そうだな。」
ふっと笑って、君にはわからないだろうなと、それ以上伝えようとすることもなく、コーヒーをすすっていました。
あなたは今、どんな明日を見ているのですか。
私とは違う世界が、そこにはあることを予感して、切なくなりました。
いつまでもこのままがつづけばいいのに。