クロス

顔がモザイクで覆われた救世主の、口から吐いた黒い蜘蛛に、縛られてやった。

自由を封じ、触れてはいけない扉をこじ開け、禁忌を犯すことを善とする。

高揚しながら、腹の中で虫が騒いでいることにすら、気づかないのだから笑える。

神に憧れる哀れな中年の妄想と、理想を盲信した女子高生による戦争。

「堕落のふりをして、愛をしてやるよ。」

満たされて浮かべた笑みに、いつの日か蝕まれるのは誰か。

彼女はわずか0.01度傾いた狭間に溶けた。