言葉の隙間∞記憶を繋ぐ
先行くね
この世界に生まれることを少しためらっていました。 けれど先に生まれて待っていることを約束しました。 「もうすぐここのお家にも、赤ちゃんが来るはずなんだけど…」 幼い私の未来予知です。 時が経ち、そんな…
曲がり角
ビクッ!!! 角を曲がると、生垣の影に小学生がしゃがんで隠れていました。 私も、その子も、お互いにびっくり。 鬼ごっこをしているようです。 慌ててペコリとお辞儀をする小学生。 わたしもペコリ。 そんな…
覚えのない贈り物[宛先:誰かの心の底番地]
送った覚えのない、毛布が届いたみたい。 いつもとは違うメッセージを読む。 何もできない自分をもどかしく思いながら、返事がない間もスマホを握りしめていた。 辛い時に、綺麗な言葉なんて、探さなくていいのに…
静かな青い星
怖いことも、苦しいことも、なくなったらどんな世界かなって、考えていた。 誰も争わなくていいの。 怯えなくていいの。 時間がゆっくり流れていそう。 多分幸せはもっと小さくなって、今よりたくさん顔を出すん…
ゴミの花を纏う
香料を作る際に廃棄される原料から、作り出された香水。「ゴミの花」 名前のセンスにどハマりしました。 美を演出するための香水が、汚れを連想させる名前をあえて掲げていることに、気高さを感じます。 “I a…
主役は水色お空のおつきさま
〝一番の贈り物はあなたと同じ時を過ごした記憶〟 なんて思っていることを知りもしない昼間の月。 呑気にぼんやり浮かんで、私を見ている。 「君、今日に限っては特に、見向きもされていないぞ。今にも霞んでしま…
錆ゆく時々、昼下がりの坂道。
赤信号にならないうちに渡切ろうと、トラックが坂道を猛スピードで登っていった。 荷台が錆びついている古いトラックで、ガタガタとけたたましい音に、タイヤが取れるんじゃないかと心配になる。 仕事の時間に遅れ…
震える君の空気で在りたい
「寂しい人に、寄り添う存在でいてほしいんだ。」 たくましく生きている人はいい、君がそんな場所にならなくとも、きっと自分で見出して生きていく、でも寂しい人の側には、いてやってほしいんだ。 想いを託すかの…
冬のひまわり
照りつける太陽と遊んでいるかのように、咲き誇っていた向日葵も、その自由奔放さを隠し、冬の空気に縮こまっていた。 なぜ一輪だけ、こんな季節に? 造花かと思って花の根本に目を向けると、しっかりと地面から生…
日暮の空とモノクロの僕
この空間から、不器用な僕を切り離したくて、外に出た。 冷たい空気が静かに僕を迎えてくれる。 「何やってんだろうなぁ。」 少し前の出来事が、頭の中で繰り返し流れていた。 「俺が話しているとき、すげぇ怖い…