蝶々結

クロアゲハは

黒いリボンにとまるんだって。

今日も長い髪を束ねた、朝日を眺める少女を連れて行ったらしいよ。

どこへ?

少女の、脳の中へ。

「朝に帰りたい」

救われることがなく、声だけがぼやけながら響いている。

音の粒を避けるようにして宙を舞いながら、忘れたはずの寂しさをもう一度潰したような瞳で、クロアゲハはこう伝えた。

「帰れるよ、きっと」

でもその言葉が少女の髪を更にきつく縛るんだ。

どんどん、どんどん、絡んでいく。

その子はどうなったの?

「ほら、目が見えなくなる前に、もう帰りなよ。」

わからない。

でも僕は見たんだ。

手首に白いリボンを結んで、朝日を眺めている子を。