椿とお見舞い

はじめて手に触れたのは小さな男の子

母親が繋ぐ手と反対側に私を握りしめて

くるくる回しながら真っ赤な色を眺めていました

親子は待合室のベンチで少し休んで、ボーロを食べたり、絵本を読んだり

しばらくしてからまた手を繋いで歩いて行きました

私はベンチの上に置かれたまま

離れていく2人を眺めています

きっと今日の私を覚えているのは

黒いワンピースを着て

わたしの向かいに座っていた女の人だけでしょう